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1 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2006/05/25(木) 01:03:56.88 ID:HCeg4jnl0
「本日午前零時、アメリカ航空宇宙局NASAは、あと二十四時間以内に
彗星が地球に衝突する可能性がきわめて高いと発表しました。
…これを受け、日本政府はかねてより建造中だった各地のシェルターの
存在を公表しましたが、 全国民を収容できるかどうかには、
「理論上不可能」との見識を発表しています。
これに対し、野党は…」


TVのニュースは、どこか映画の1シーンのようだった。俺はTVをつけたまま、ネットでVIPを開いてみた。

『収容許可の通知が来た奴集まれwwwpart35』
『【勝ち組】どうやって選別してんの?【負け組】』
『どのアニメキャラと一緒に収容されたい?』
『地 球 終 わ っ た な 』
『最後まで晴れ晴れユカイを踊り続けるスレ』

状況が飲み込めてない奴、諦めてる奴、未だに釣りだとおもってる奴、そして全てを受け入れて楽しんでる奴。

赤い目で、(これについては後で告げよう)
「俺もいっちょ最後に糞スレを建ててみるとするか」、とキーボードに手を伸ばそうとしたとき、
突然けたたましくケータイが鳴り出した。

ツンからだった。
「いまから、公園まで来なさい」
絵文字でも飾るでもなく、ただ、用件だけを告げるいつもの文体。
ただ、有無を言わせないその命令は、なにか決意を秘めているようでもあった。
5 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2006/05/25(木) 01:05:39.31 ID:HCeg4jnl0
深夜なのにあちこちの家から光が漏れている。皆、ニュースでも見ているのだろう。
2ちゃんを見てなかったには寝耳に水、まあ、見てた人間にしたってほとんどが信じていなかっただろう。
(俺もその一人だが)
しかし、なんだか怖いほど静かだ。明かりはついているのに話し声一つ聞こえてこない。
パニック映画なんかだったら、そろそろ街は暴徒に荒らされていそうなもんだが。
しかし無理もない、誰もまだ状況を飲み込めていないのだ。日常に持ち込まれた非日常。
誰もが心の底で望んでいながら、目の前に現れると拒絶する。

もう通知が届いているのだろうか。VIPのスレで見た限りでは、収容の通知が来た奴は
かなり少数らしい。(もちろん嘘も混じっているだろうからそれを考えるともっと少ないな)
わざわざ不可の通知は送ってこないようだから、届いてるとしたらそれは許可の通知だ。
大声で騒ぎたて…はしないだろうな。他人に知られて横取りされるのを警戒するし、そもそも
家族全員が選ばれるとは限らないのだ。
6 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2006/05/25(木) 01:08:26.54 ID:HCeg4jnl0
俺の親はSNEG?的に海外で生活していた。今から戻るのは不可能だろうし(航空機のチケットが高騰しているらしい。今更金なんて何の価値があるか分からないが。)
電話回線はパンク状態で連絡が取れなかった。

メールが来たのはついさっき、
「何とか帰ろうとはしているがどうも無理そうだ。
私たちはこちらのシェルターに入れることになった。
そちらの状況はどうなっている?」

俺は少し安堵していた。向こうのシェルターは数が多いのか、大きいのかは知らないが、とりあえず肉親がそこに入れたことは、ただただ嬉しかった。

そして俺は返信した。

「こっちは入れそうに無い。いままでありがとう」


それ以上は涙が出そうで何も考えられなかった。俺はそれだけ送って、もう後はメールを見なかった。
おそらく受信箱にはいくつも返信が来ているだろうが、それを見るのははばかられた。
いくら話して悲しませたところで俺はシェルターに入れない。そのことだけで親不孝だ。
なんだか自分勝手なようだがそれでいいと思えた。
8 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2006/05/25(木) 01:10:26.90 ID:HCeg4jnl0
ツンが言っていた公園の入り口に着いた。そんなに広くない公園なので、そこからでもツンの姿は確認できた。
ツンはベンチに一人座り込んで、なにか見つめているような、それでいて何も見てないような目で目の前を向いていた。
向こうはまだこっちに気づいていない。声をかけようとして思いとどまる。
こんなときに笑顔で手を振るのは場違いだろう。
そもそもアイツ、何で俺を呼び出したんだ?
俺がそんなことを考えているうちに、ツンはこっちに気がついたらしい。ジッと俺を見つめていた。
気まずくなってそろそろと近づいた。

「遅い」
第一声がそれか。家族との間のつらい別れを覚悟して出てきた男に。

「…何の用だよ」
大分ムスッとして応えた。
咎められたのに腹が立った、というより家族のことを思うとまた涙腺が緩みかけて
それを取り繕うためだった。

「通知、来た」

ぼそっと、わざと聞き取りづらいようにしてるんじゃないかと思うくらい小さな声で彼女はつぶやいた。
9 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2006/05/25(木) 01:11:41.95 ID:HCeg4jnl0
「え?」
聞き返してしまう。なんとか聞き取れていたし、意味もなんとなく分かった。
ただ、そうしなきゃいけないような気がしたからだ。
「収容許可、だって」
ツンは持っていた紙とIDカードらしいものをひらひらと俺の目の前で揺らしていた。
まるで、何の価値も無いもののように。ただの紙切れだって、笑うように。

「おま…、それ…」
何が言いたかったのか分からない。でも何か言わなきゃ耐え切れない。
そんな空気に促されるように、俺は何の意味も無い言葉を口にしていた。
そんな俺を見て、ツンは少しうつむいた。
13 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2006/05/25(木) 01:13:56.58 ID:HCeg4jnl0
「あ…」
そうか、今ので全部分かったんだ。俺に通知が来ていないこと。
そして、通知がきたツンにほんのちょっとでも嫉妬のような感情を抱いてしまったこと。
「よ、良かったな、めちゃくちゃラッキーじゃん」
取り繕うように言ったところで、もう駄目だった。
ツンはまた俺をジッと見つめていた。
「ホントにそう思う?」 
?彼女が何を言いたいのか、何をそんなに俺を責めるようにみているのか
分からないまま、とりあえず応える。
「当たり前じゃん。さすがツン、羨ましいよww」
もう何を言えばいいか分からない。
この気持ちは何だろう。
ひたすら、寂しいように、虚しいように感じながら、ツンが
助かるかもしれない、ということに喜んでいた。家族に感じたあの感情と同じだ。

本当におめでとう、と言おうと思った。そして泣いてしまう前に走って帰ろう。
14 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2006/05/25(木) 01:15:15.20 ID:HCeg4jnl0
俺は、ツンが好きだったんだ。いまさら気づいた事に後悔を通り越してあきれる。
好きな人が助かる、それでいいんだ。

アレ、もしかして俺すでに泣いてるんじゃないだろうか。滲む視界でツンを捉えて
「本当におめd…」
「あげる」
俺の言葉を塞いで、彼女は手に持っていたものを突き出した。

思考が一瞬で停止するとともに、涙が止まった。
「は?」
今度こそ、彼女が何を言ってるか全く分からない。
シェルターに入る権利を、生き残る権利を俺に譲る?
「アンタ、通知来てないんでしょ」
強引に俺の手に書類を握らせた。何考えてんだ?こいつは。

「私、別にそんなところ行くつもり無くってさー。
生き残ってどうすんの?って感じじゃない。
どうせアンタ、煩悩いっぱいで生き残るのに必死になってるでしょ?
だから恵んであげるわ」

しばらく書類を持ったまま突っ立って彼女の声を聴いていたが、我に返る。
15 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2006/05/25(木) 01:17:26.02 ID:HCeg4jnl0
「何言ってんだよ。こんなもんもらえないよ。
大体、IDカードとか本人しか無理に決まってるだろ」

俺は書類を押し返しながら言ったが、ツンはそれを受け取ろうとはしない。
「意味わかんねーよ。お前、ほんとどうしたんだよ」

考えてみれば、ツンはこれを俺に渡すためにここへ呼び寄せたってことか?
もう一度彼女の顔を見た。意思の強い目で俺を見ている。だがそれが少し潤んでいるように見えたのは気のせいだろうか?
しかし彼女は視線をそらすと、演技ったらしい動きで
「わ、私が譲ってやるって言ってるのよ。ありがたく受け取りなさい。ほほほほほ」

いつもなら、なんだかぎこちないそんな言動も微笑ましいが、今回は状況が違いすぎる。
「お前なあ…。こんなときに冗談言ってる場合じゃないんだぞ。
確かに俺が貰えなかったのは悔しいけど…。
でもお前が代わりになる必要なんて無い。
なんかこれでお別れかって思うと哀しいけど…。

うん、お前なら一人でもしっかりしてるし大丈夫、
生き残っても大変だろうけど、頑張れよ」


16 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2006/05/25(木) 01:18:37.14 ID:HCeg4jnl0
ツンは、ホントはやさしくて。たぶん本気で俺に譲るつもりだったんだろう。
でも、そんなの受け取れない。好きな人を犠牲にして生き残った世界に何の価値があるんだろう。

もういい、早くこの場から離れさせてくれ。泣き出しそうで居たたまれなくなって
書類をツンに無理やり押し付けると振り返って走り出そうとした。

「いや…」
ばさっ、と何かが落ちる音。
そして
後ろから暖かい感触。なんだ?と思った瞬間、俺の胴の辺りで白い手が結ばれていた。
「!?」
ツンが後ろから俺を抱きしめている?また思考が吹っ飛んだ。
「嫌だよ…。あんたがいない世界に一人で生き残るなんて…。そんなの…」
18 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2006/05/25(木) 01:20:09.83 ID:HCeg4jnl0
初めて聴くツンの泣き声だった。いや、そんなことより…

なんて鈍感なんだろう。俺は。ツンが口にした言葉で全て理解できた。
なんて残酷なんだろう。世界は。せっかく自分の気持ちと、彼女の気持ちに気づいたのに。
もうお終いなのか。今まで耐えていた涙が、あまりの不条理さに押し出されていた。
「ツン…」
名前を呼んでみる。大切だって気付けた名前。あと何回呼べるかも分からない名前。
ビクッと、彼女は手をほどき、うしろへ飛びのく様に離れた。俺は振り返って彼女を見た。
「び、びっくりした?もう最後みたいだから、その、サービスよ、サービス!」
赤い目をしながらそういう彼女を、愛らしく感じて、クスクスと笑った。なんだかひどく懐かしい感情だった。
「あ…」
彼女も、俺の赤い目に気付いたようだった。
今なら自信を持って言える。

「ツン、ごめん。いままで気付かなくて。俺は、ツンが好きだ」
ホントにボンッと音がするように、ツンの顔が、目と同じくらい真っ赤になった。
「あ…え、…うん」
今度は俺から、ツンを抱きしめた。いつもの態度の割りに、小さくて細い、華奢な体が
いっそう愛しく思えた。
20 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2006/05/25(木) 01:23:23.10 ID:HCeg4jnl0
「ホントに良いんだな」
「うん、当たり前じゃない」
崖から、白い紙がひらひらと海面へ落ちていく。誰かがこれを拾うときは来るんだろうか。
来たとして、そのとき果たしてこの紙はなにかの価値を持っているんだろうか。
無骨に「許可」と判を押された紙と、カードを見つめていた。
ホントはツンにシェルターに入ってもらいたい。その気持ちは勿論あった。
でも、彼女にはいくら言っても意味が無かったし、本当はとても嬉しいと感じている部分もあった。
これが最期だとしても、最後までツンと居られる。それだけで良かった。

不気味な色をした星が俺たちを見下ろしている。
「どうなるんだろうね、私たち」
「なんとかなるさ。」
俺は手を伸ばして彼女の手に重ねる。
彼女は何も言わず、ぎゅっと握り締めてくれた。

誇張でも、負け惜しみでもない。
二人でいたら、なんとかなりそうな気がしてるんだ。

俺は水平線を見つめた、もうすぐ夜明けだ。
隣に居る彼女も、同じところを見つめているように思えた。


21 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2006/05/25(木) 01:27:15.06 ID:HCeg4jnl0
長々と失礼しました
22 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2006/05/25(木) 01:27:50.85 ID:2AxO4E450
GJ
23 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2006/05/25(木) 01:28:01.98 ID:aBA/8Clw0
いや、すっきりしててよかった
さいきんいろいろ冗長だから
24 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2006/05/25(木) 01:28:15.70 ID:pVRAGMWY0
>>1
IDがエロゲ。
でもGJ
25 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2006/05/25(木) 01:28:23.78 ID:tb1v1sQn0 BE:854496498-
感動した

たったこんだけでものすごい大作だな
いつまでもやってるそこいらの小説よりよっぽどマシ
26 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2006/05/25(木) 01:28:55.50 ID:ofD0B0wTO
>>21
gj
30 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2006/05/25(木) 01:35:00.60 ID:hQOmd0G6O
空虚な読後感が上遠野チックでいいな。
32 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2006/05/25(木) 01:39:03.41 ID:8XI2DiY/O
初めてツンを等身大に感じた
33 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2006/05/25(木) 01:42:02.06 ID:2vtv8j/90
>>1
乙でした
34 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2006/05/25(木) 01:56:23.06 ID:HCeg4jnl0

正直不安だったけど
好評なようでよかったです。

それでは、今日がいつもの日であるよう願って
おやすみなさい
http://ex14.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1148486636/

2006/05/25(木) 06:14:25 | VIP | トラックバック(0) | コメント(7)

point63: Neo

短めで読みやすかった。

2006/05/25(木) 13:59:12 | URL | [ 編集]

point64: 以下、名無しに(ry

なかなかの秀作。GJ!

2006/05/25(木) 19:33:55 | URL | [ 編集]

point65: 以下、名無しに(ry

いい!

2006/05/25(木) 19:52:19 | URL | [ 編集]

point66: 以下、名無しに(ry

良かったよ。映画にしてくれ

2006/05/26(金) 02:02:19 | URL | [ 編集]

point74: 作者

作者です
自分の建てたスレがブログに取り上げられててびっくりしましたwwwww
あのまま消えてしまうと思ってたので、少しでも多くの人に読んで貰える場を与えられて光栄です。

2006/05/26(金) 23:33:55 | URL | [ 編集]

point75: とろとろ

わっ!作者さま、こんばんわwww管理人です。
このスレを読んだ後に、残るものがありましたので掲載させていただきました。

勝手に転載して申し訳ありません。
また、PVの少ない弱小ブログゆえに、作者様のご期待に微力でしか答えられず、申し訳ないです。

それと、事後承諾になりますが、掲載にあたりまして
若干、改行位置を修正させていただいた部分があります。
何卒ご容赦くださいませ。

作者様の次の作品にご期待下さい!!

2006/05/27(土) 00:29:41 | URL | [ 編集]

point618: DIO

最高だ!
WRYYYYYYYYYY!!!!!

2006/08/31(木) 00:41:13 | URL | [ 編集]

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